gochi spe 07

帰省してる時の話。

自室で帰りの用意をしていると、甥っ子の私を呼ぶ声がする。

そのうちどこかへ行ってしまった様なので、用意の続きをしていると、
妹がやって来て、甥っ子が見当たらないコトを 私に告げる。

2人で辺りを探していると、彼の靴が玄関にない事に気付いた。

甥っ子は現在5歳。

実家のロケーションには詳しくなく、辺りには危険な箇所もある。

2人で慌てて外に出て、彼の名前を呼びながら探していると、
彼は意外な場所にいた。

家の裏にある家庭菜園だった。

まだ暑さの残る9月下旬、ミニトマトが熟れた実になっていた。
妹が駆け寄って尋ねる。

「あー見つけた~ こんなトコで何してるの?」

私は少し遅れて辿り着き、
彼からは木の陰になって見えない場所で彼の言葉を聞いた。

「あのね、なぁな(アタイのコト)にあげようと思って、
おおきなトマト、探してるんだ」

小さなコは、ボキャブラリーが少ないのと、
人生と駆け引きの経験が少ない為に、
よくこういうストレートな言葉や行動を見せるような気がする。

シンプルなんだけど、すごくハッとさせられるんだよね。

傷つくコトや恥じるコトを恐れて、大人はこういうシンプルだけど、
とっても大事なコトを出来なくなっているなぁって。

「じゃあ、一緒に探そうね」

「うん。赤くて大きいのがないかなぁ」

なんか、出て行けなくなった。

畑から戻ってきて、私を見つけた彼は、
「あ!」という顔をして駆け寄ってくると

「はい、なぁな」

とだけ言って、小さな手に持っていた一番大きなトマトをくれた。

なぁなの為にとってきたんだよとは言わないの。

きっと、自分で「誰かの為にしたかったから」
した行動なのだろうと思った。

「誰かの為にやってあげよう」ではなくて。

その後 彼は、次に大きいトマトを妹へ渡し、
自分は一番小さくて赤みの少ない一つを取った。

こういう気持ち、忘れてしまった気持ちなのかな。
素直って大事だなって思った。
大事なことを教えてもらった気がする。